全ての呼吸の源流である『日の呼吸』の使い手
継国縁壱(つぎくに よりいち)とは、『鬼滅の刃』に登場する鬼狩りの剣士である。
凄まじい才能の持ち主で、生まれつき痣を発現させ、鬼の首魁である鬼舞辻無惨を追い詰めた。全ての呼吸の源流である『日の呼吸』の使い手であり、その『日の呼吸』から派生した呼吸は、縁壱が他の剣士に自身の技を教える過程で作り出された。
炭治郎の祖先に『日の呼吸』を教えており、それが『ヒノカミ神楽』として伝えられていた。
継国縁壱(つぎくに よりいち)とは、『日の呼吸』の使い手である『始まりの呼吸の剣士』である。
上弦の壱である黒死牟(人間の時の名前は継国巌勝)の双子の弟である。
生まれつき痣を発現させており、子供の頃から『透き通る世界』を見ることができた。後に常識はずれの強さを持つ鬼狩りの剣士となる。その強さは、無惨でさえも敵わないほどであり、兄である巌勝は縁壱の強さに嫉妬し、鬼になっている。通常、痣を発現させた者は二十五歳を超えることなく死んでしまうが、縁壱だけは死亡していない。さらに老人になってもその強さは衰えなかった。まさに、理の外にいる人物である。
自身が使う『日の呼吸』を多くの人間に教えたが、『日の呼吸』を使える者はいなかった。そこで縁壱は個人に合わせた『呼吸』を教えた。それが『水の呼吸』や『炎の呼吸』など、派生した呼吸の始まりである。炭治郎の家では『ヒノカミ神楽』として伝わっていた。縁壱は炭治郎の祖先を助けており、おそらくその時に『日の呼吸』の型を教えたと思われる。
刀鍛冶の里では、縁壱をモデルにした絡繰人形『縁壱零式』が作られた。その際、二本腕では縁壱の強さを再現することができずに六本腕になっている。この『縁壱零式』の中には、縁壱が使っていた日輪刀と同じ『滅』の字が彫られた日輪刀が隠されていたが、これが縁壱の日輪刀と同一のものかは分からない(鍔の形状が異なっており、縁壱の日輪刀にはない独特の刃文がある)。
感情が顔に出ることは非常に少ない。双子である巌勝でさえも数えるほどしか縁壱の笑顔を見たことはない。
幼少の頃から、人の為を思って行動する心優しい性格をしている。しかし、その正しさのあまりに兄の巌勝は歪んでしまった。
黒死牟/継国巌勝との物語
差別された幼少期
縁壱は双子の弟として生まれた。その当時、双子は跡目争いの元となってしまう為に不吉なものとされていた。縁壱は生まれつき痣があった為に気味悪がられ、父親によって殺されようとした。しかし、それを母親が必死で止めた為に生かされ、縁壱は十歳になったら出家させられる事を決められていた。
それから縁壱は後継ぎとなる双子の兄・巌勝とは差別されて育てられた。着る服、食べ物、部屋、教育など、全てにおいて差をつけられたが、縁壱は文句一つ言わなかった。その頃から既に縁壱は『透き通る世界』が見えていた。それ故に、母親が病によって左半身が不自由だという事に気づき、常に母親の左側について助けていた。しかし、側から見れば母親に甘える子供のようにしか見えていなかった。
ある日、差別され、母親の隣かな離れようとしない縁壱を哀れんだ巌勝が、縁壱の部屋を訪ねる。巌勝は自分の物を縁壱に与えると父親から叱られる為、自分で作った笛を縁壱に渡した。縁壱は喜びを表情に出すことがなかったが、その笛が宝物となった。
双子が七歳になった頃、剣の稽古をしている巌勝に、縁壱は「兄上の夢はこの国で一番強い侍になることですか?」と尋ねた。巌勝はその時初めて縁壱の声を聞いた。それまで縁壱は耳が聞こえない物だと思われていた。縁壱はその時、自身も侍になると言って笑った。初めて見せた縁壱の笑顔は、巌勝に気味悪がられていた。
巌勝の剣の先生が口頭で剣の振り方を縁壱に教え、試しに打ち込むように言った次の瞬間、縁壱はその男を倒していた。縁壱はその時に味わった感触が耐え難く不快で、それ以降、侍になりたいとは言わなくなった。
縁壱は強さの秘訣を聞きに来た巌勝に「打ち込んで来る前に肺が大きく動く。骨の向きや筋肉の収縮、血の流れをよく見ればいい。」と教えた。しかし、『透明な世界』を見ることができない巌勝には何を言っているのかが理解できなかった。巌勝が分かったのは、自分より下だと思っていた縁壱が自身より遥かに優れているという事実だった。その件がきっかけで巌勝は縁壱に嫉妬の炎を燃やし始める。
その後、ある夜に母親が病により死亡する。母親を見届けた縁壱は、その直後に巌勝の部屋を訪れる。そして縁壱は、母親が死んだ事、このまま寺に向かう事を告げた。縁壱の剣の腕が明らかになったことにより、父親は巌勝ではなく縁壱を当主にしようとしていた。巌勝は自身と縁壱の扱いが逆になるのではないかと恐れていた。それを察知していた縁壱は自ら家を出ようとしていたのだった。縁壱は以前に巌勝から貰った笛を取り出し「いただいたこの笛を兄上だと思い、どれだけ離れていても挫けず日々精進いたします。」と笑顔で言い、荷物をろくに持たずに去って行った。父親は縁壱を連れ戻そうとしたが、縁壱は寺に行っておらず、消息不明になった。
巌勝は母親が遺した手紙により、縁壱が自分が当主にならないように家を出た事、左半身が不自由な母親を支えていたことを知る。巌勝は常に正しい行いをしてきた縁壱を心から憎悪した。
それから時が経ち、縁壱は鬼狩りの剣士となっていた。
ある日、縁壱は鬼に襲われていた巌勝を助ける。巌勝は縁壱の強さに追いつくために家庭や地位など、全てを捨てて鬼狩りの剣士となった。
縁壱は自身が使う『日の呼吸』を他の剣士達に惜しみなく教えたが、『日の呼吸』を使えるものはいなかった。そこで縁壱は剣士に合わせた呼吸を教え、その結果、様々な派生の呼吸が生まれた(この時期に炭治郎の先祖に『日の呼吸』を教えたと思われる)。
巌勝はいくら鍛錬しても派生の呼吸である『月の呼吸』しか使えず、縁壱に追いつくことはできなかった。そんな時に巌勝は無惨に会い、強さを手に入れるために鬼となってしまう。
黒死牟との戦いで命を落とす
それから数十年後、縁壱は八十歳を超えても生きていた。そして赤い月の夜に鬼となった兄と再会する。縁壱は黒死牟の姿を見て「お労しや。兄上。」と涙を流し、刀を握った。縁壱の強さは八十を超えても尚、まったく衰えておらず、黒死牟は手も足も出なかった。その時、黒死牟は「何故いつもお前が、お前だけがいつもいつも特別なのか。痣者であるというのに生き永らえ、その老骨で振るう技は、全盛期と変わらぬ速さ、そして威力。彼の方をも追い詰めた剣技。それは髪の御技に他ならない。」という憤りを抱えていた。
しかし、縁壱は黒死牟との戦いの最中に寿命が尽き、立ったまま死亡してしまう。縁壱の着物の中には、かつて巌勝から貰った笛があった。
戦いの最中に寿命が尽きた縁壱