柚「ねぇ、Pサン?」

P「何だ?」

柚「Pサンって確か、奈良県出身だったよね?」

P「あぁ」

柚「アタシ、修学旅行で関西に行ったことがあるんだけどさ」

P「そこで奈良も行った、と?」

柚「ウン。それでね?」

P「寺と神社と鹿ばっかりだったから、他に観光するものはないかって?」

柚「うんそうそう…って何で分かるの?」

P「分かるとも。今まで何百回と聞かれたからな」

柚「あ…ごめん」

P「謝ることじゃないさ。で、まぁ…修学旅行ってことは、京都から近鉄で近鉄奈良、そこから東大寺なり東福寺なりってルートか?」

柚「すごい、当たってる!」

P「修学旅行で来るような観光地の候補って言ったら、これくらいだからな」

柚「他には何かないの?」

P「無い」

柚「無いことはないでしょ~」

P「無い」

柚「…ほんとに?」

P「無い。学生が修学旅行で観光するような所は奈良市の市街地しかない」

柚「うっそだー」

P「本当だって」

3: 名無しさん@おーぷん 20/10/18(日)03:37:10 ID:U0S
柚「だって他にも有名なのいっぱいあるじゃん?法隆寺とかー、吉野の桜なんかも有名じゃない?」

P「法隆寺は確かに面白いけど普通の学生が来る所じゃないし、吉野なんか行ってたら一日潰れるぞ」

柚「むぅ…」

P「本当だって」

ガチャッ

のあ「…P、随分と賑わっているようだけど」

歌鈴「Pさん!お、おはようございましゅ!」

P「のあと歌鈴か。おはよう」

柚「あ、二人とも良いところに!」

のあ「何の話をしていたの?」

4: 名無しさん@おーぷん 20/10/18(日)03:37:35 ID:U0S
柚「それについてお二人に質問を1つ!奈良駅周りのお寺と神社以外に、有名な観光地を教えてくーださい!」

のあ「無いわ」バッサリ

歌鈴「無いですね」バッサリ

柚「即答!?」

P「だから言っただろ?」

柚「いや…いいやまだだ!美味しいもの!美味しいものはあるはず!何たって自然豊かなんだし!」

のあ「無いわ」バッサリ

歌鈴「無いですね」バッサリ

柚「即答!?これも即答された!」

5: 名無しさん@おーぷん 20/10/18(日)03:37:54 ID:U0S
P「旨いもの…奈良漬けとか、柿の葉寿司とか?」

のあ「奈良漬けはアルコール含有よ。それにあの味…好き嫌いも大きくわかれるでしょう?」

P「確かになぁ…」

のあ「奈良漬け、私は好物なのだけど」

歌鈴「私は苦手です…柿の葉寿司もおいしいですけど、どちらかと言うとあれは南部の物ですし…」

P「だよなぁ。奈良の物じゃないよなあれ」

柚「え?…南部?奈良って南北で別の県なの?」

P「そんな感じ?」

のあ「そうね」

歌鈴「別の地域ですよね」

柚「…?????」

P「こんがらがってるな…図に書いて説明するぞ」

6: 名無しさん@おーぷん 20/10/18(日)03:39:24 ID:U0S
P「こう、奈良県があるとするだろ?」



柚「ウン」

P「まずはそれをこう分ける」バッサリ




柚「半分以下!?」

のあ「足りないわね」バッサリ




柚「もっと減った!」

歌鈴「妥当ですね」

柚「妥当なの!?」

歌鈴「妥当です」

柚「妥当なんだ…」

7: 名無しさん@おーぷん 20/10/18(日)03:40:36 ID:U0S
P「残ったコレが奈良県の全てだ」

柚「嘘でしょ!?」

P「マジマジ。なぁ?」

のあ「そうね」キッパリ

歌鈴「その通りです」キッパリ

柚「…そうだ!十津川村!昔にテレビでやってたよ!熊野古道とかあるじゃん奈良南部!」

のあ「十津川村…?」

柚「えっ何その反応」

歌鈴「天気予報の時に名前だけ見るくらいですね…」

P「そもそもどこにあるんだ…?」

のあ「ここよ」スッ



P「あーここかぁ」

歌鈴「勉強になります!」

柚「本当に何処にあるのか分かってなかったの…!?」

P「おう」サラッ

歌鈴「詳しくは知らなかったです」サラッ

8: 名無しさん@おーぷん 20/10/18(日)03:41:04 ID:U0S
柚「サラッと…!熊野古道!熊野古道は!?」

P「熊野はどっちかと言うと和歌山だよな」

のあ「そうね」

歌鈴「とても重要な場所ではありますけど…参道は那智からですものね」

P「というわけだ。潔く諦めろ」

柚「なんでそう…なんでそう卑屈なの…!」

P「実際何もないからな」

のあ「あるのは溜め池とイオンモールくらいかしら」

歌鈴「あとは古いお寺と歴史ある神社と…古墳…くらいですね」

柚「故郷に対する評価が低すぎる…!」

9: 名無しさん@おーぷん 20/10/18(日)03:41:46 ID:U0S
P「…うし、いい機会だから、奈良の魅力の無さについて聞かせてやろうじゃないか」

柚「嬉しくない…これだけ言われた後に語られてもなにも分からない…」

P「まずは立地だな」

P「奈良は大阪、京都、三重、和歌山に四方を囲まれた盆地だ」

のあ「夏は暑く冬は凍える…」

歌鈴「私、実家の関係で…お正月は薄着でお仕事しなきゃいけないんですよね…」

のあ「辛いわね」

歌鈴「実家のお仕事ですから、文句は言ってられませんけどね!」

柚「そんなに寒いの?」

P「冬の朝方は普通に氷点下切るぞ」

柚「さっむ!」

P「そして夏は40℃近くまで上がる。田舎だから陽を遮る建物もない。更に風も吹かない」

柚「嫌だなぁ…」

10: 名無しさん@おーぷん 20/10/18(日)03:42:56 ID:U0S
P「立地と言えばもう1つ。一番栄えてるのが奈良市なのに、一番発展のしようが無いのも奈良市だったりするんだ」

柚「どういうこと?」

歌鈴「ここは私が。まずはこれを」スッ



柚「これは?」

歌鈴「奈良県の興り、古都奈良を象徴する遺跡の『平城宮跡』の航空写真です。何か、気になる部分はありませんか?」

柚「んー?……あっ、真ん中を電車が通ってる!」

歌鈴「正解です。これこそが、奈良が発展しない理由をよく表しているものなのです」

柚「どういうこと?これじゃあ邪魔になるし、退かすか地下に埋めちゃえば解決するんじゃないの?」

歌鈴「それが出来ないんです…」

柚「出来ないって?」

歌鈴「地下に埋めようとしたら、遺跡が出てきちゃうから…」

柚「遺跡が?出る?」

11: 名無しさん@おーぷん 20/10/18(日)03:43:23 ID:U0S
歌鈴「柚ちゃん。日本史の授業で、古代奈良に何があったか、覚えていますか?」

柚「えーと…平城京?」

歌鈴「正解です。平城京、その範囲が問題なんです」

歌鈴「平城京はとても大きな都でした。その為、人々が住んでいた場所もかなりの広範囲に散らばっていて…奈良市内のどこかを掘ったら、ほぼ必ず遺跡が出てきてしまうんです」

柚「またまた~」

歌鈴「本当ですよ?更に厄介なのが、人が住んでいたのは平城京だけじゃないって所なんです」

歌鈴「平城京内だけじゃなくて、周辺にも古代の遺跡が眠っています。郊外の開発をしようにも、掘ったら遺跡が出てきますから…」

柚「掘り起こして面倒になるくらいなら、埋めたままにしておこう…ってこと?」

歌鈴「そうです。敷地内から出てきた遺跡のせいで、建設が年単位で遅れるくらいなら普通です。ですよね?」

P「実家近くに出来たイ◯ンモール、確か遺跡のせいで4年近く竣工遅れたんだったかな?」

のあ「郡山の?」

P「そうそう。大昔から何かが出来る!って噂はあったんだが…実現するまで時間がかかりすぎだ」

12: 名無しさん@おーぷん 20/10/18(日)03:44:38 ID:U0S
のあ「私の実家は、建て直す時に土器が出てきたわ」

柚「土器!?家の下から!?」

のあ「えぇ。そのせいで、予定変更を余儀なくされたわ」

P「そのまま埋め直せば良かったのに」

のあ「現場に役所の方が同伴していたの」

P「あー…それは仕方ないな」

柚「会話についていけない…!」

歌鈴「話を戻しますね。えーと…平城宮でしたね」

歌鈴「で、近鉄線が移設できない理由なんですが…」

柚「工事し始めたら、色々と出てくるから…?」

歌鈴「正解です」

P「近鉄の移設も大昔から言われてるけど、一向に進む気配無いよな」

のあ「そもそも移設する場所が無いでしょう」

13: 名無しさん@おーぷん 20/10/18(日)03:45:15 ID:U0S
歌鈴「それなんですけど、この前奈良県から情報が出まして…これなんですけど」スッ

https://i.imgur.com/mW5ru3p.jpg

P「…1号線に通すのか?」

歌鈴「らしいです」

のあ「通せるのかしら」

P「無理じゃないか?あの辺土地無いだろ。それこそ1号線の上くらいしか」

のあ「夢物語ね」

柚「あ、あのー…」

のあ「何」

柚「そのー…なんでそんなに、移設にこだわるのかなーって」

P「平城宮跡の景観が悪くなるだろ?」

柚「それもそうなんだけど、何かそれ以上の理由がありそうだなって思って。だって、昔から何回も計画されてるんでしょ?」

P「あぁうん。理由なー…」

のあ「西大寺駅ね」

P「あーあれかー…それもそうだよなぁ」

14: 名無しさん@おーぷん 20/10/18(日)03:46:27 ID:U0S
柚「西大寺駅?駅が移設の理由なの?」

のあ「これを見て」スッ




柚「何、この…何?」

のあ「奈良県の実質的な拠点駅、大和西大寺駅よ」

柚「これ…全部必要なの?」

のあ「勿論。その説明をするなら、こっちね」スッ




のあ「西大寺駅は京都、大阪、奈良と橿原…奈良南部からの路線が交わる交通の要衝。そこに車庫へ向かう線路も集約させた結果が、さっきの写真よ」

柚「…線路を移設するか高架駅にしてしまえば、この機能を解消できるってこと?」キュピーン

のあ「そうよ」

柚「でもそれが出来ないから、今まで何度も計画が出ては消えていったと」

P「そういうことだ。分かってもらえたかな?」

柚「これだけヒントが出てたら、流石にね…」

15: 名無しさん@おーぷん 20/10/18(日)03:46:44 ID:U0S
P「あとはそうだな…」

歌鈴「最近は多少マシになりましたけど、ホテルの少なさは相変わらずですよね…」

P「あぁ、それがあったな」

柚「そんなに?埼玉より?観光客が多いんだし、ある程度はありそうだけど」

P「奈良をなめるなよ。宿泊所の少なさで言えば全国最底辺だぞ」

柚「嘘でしょ?」

P「マジだって。ホテル作ろうにも遺跡が出るし、そもそも奈良に泊まるメリットがないし」

柚「遺跡はもう分かったけど、メリットがないって?」

16: 名無しさん@おーぷん 20/10/18(日)03:47:02 ID:U0S
P「そうだな…まず大前提として、奈良には繁華街がないことを覚えておいてくれ」

柚「………分かった」

P「で、だ。観光したあと夜まで奈良に留まっても、行くところがない。飯屋すらも存分にない。ファミレスか小さな飲み屋しかない」

柚「まぁ…それは埼玉も同じだし…」

P「奈良駅から近鉄電車で30分行けば、日本でも有数の繁華街が広がる大阪キタに出られる。JRなら45分ほどで難波・ミナミまで簡単に出られる」

P「奈良から北に向かえば1時間足らずですぐ京都だ。奈良に留まっても何にもならない」

柚「埼玉だ…」

P「でもって、翌日移動するにも大阪や京都にいたほうが都合がいい。奈良から大阪・京都に向かおうとすると、時間も金もかかる」

柚「埼玉じゃん…」

P「更にこれに拍車をかけてるのが、『大仏商売』だ」

柚「何それ?」

17: 名無しさん@おーぷん 20/10/18(日)03:47:24 ID:U0S
のあ「大仏様がおられるのだから、私たちが何もしなくとも、観光客はいくらでも来る」

歌鈴「それなら何もせず、ただ観光客が大仏様に落とすお金を拾えばいい…という精神です。県民性とも言いますね」

柚「それは…どうなの?」

のあ「悪習よ」キッパリ

柚「これまたキッパリと」

P「自分達は大仏様の観光で生きていくから、宿泊や食事は大阪に任せよう…って理屈だよ」

歌鈴「最近はちょっとマシになってきましたけど…それでもまだまだ根強いです」

柚「何とかしようとは思わないの?」

P「誰もが思ってるさ。思ってるだけだが」

のあ「誰もそれを行動に移そうとはしないわ。県民性の悪いところが如実に出ているわね」

歌鈴「実行して失敗したら、損を被るのは自分達ですから…」

柚「それでそのまま、今の今まで続いている、と…」

のあ「そういうこと」コクリ

18: 名無しさん@おーぷん 20/10/18(日)03:47:47 ID:U0S
P「奈良に旨いものなし、なんて格言もあるくらいだからな」

柚「馬鹿にされてるじゃん…」

P「事実だからな」

歌鈴「ですね」

のあ「奈良で美味しいものを探すくらいなら、近鉄百貨店で551を買うわ」

P「いいよなぁ551。しばらく食べてないなぁ」

のあ「私はこの間のライブで食べたわ」

歌鈴「私も食べました!」

P「いいなぁ…食べるほど時間なかったんだよな俺…」

柚「その、551って…ライブ前にのあさんが食べてた肉まんのこと?」

のあ「豚まんよ。焼売や小籠包もあるけれど」

歌鈴「蓬莱食堂も美味しいんですよね~!海外ロケの帰りに関空で食べて以来、一度も行ってないなぁ…」

P「…うし、次の休暇で買ってくるわ。冷凍のやつな」

柚「ほんと!?」

P「食いつくな食いつくな。持てる限り買ってくるから、楽しみにしてな」

柚「やったー!…あ、その551って、奈良のものなの?」

P「大阪だぞ」

柚「あぁ違うんだ…」

19: 名無しさん@おーぷん 20/10/18(日)03:48:04 ID:U0S
P「まぁ、何だ」

P「奈良県はな…中学生・高校生だと本当に虚無だが、ある程度年を取ると魅力的なものも増えてくるんだぞ」

柚「例えば?」

P「寺、神社、古墳だな」

柚「東大寺とか?」

P「それもそうだが、寺なら法隆寺の方がおすすめだぞ」

歌鈴「法隆寺良いですよね。建立が余りにも古すぎるせいで、他のお寺にはない独特の特徴が大量にあって…」

のあ「古墳もいいものよ。桜井線沿線…奈良市内から南に下っていく鉄道に沿って古墳が集中しているから、途中下車しながら見比べるのも良いわね」

柚「へぇ~…」

20: 名無しさん@おーぷん 20/10/18(日)03:48:32 ID:U0S
P「百人一首に載るようほど有名な短歌に出る場所を巡るのもいいな」

のあ「ちはやふる 神代もきかず 竜田川…」

柚「…からくれないに、水くくるとは!」

のも「正解よ。良くできたわね」ナデナデ

柚「えへへー♪」

歌鈴「竜田川を紅葉が赤く染めている美しさは、神の時代にも聞いたことがない…という歌ですね」

P「この竜田川に沿って走る電車があってな…秋に乗るとまぁ綺麗なんだこれが」

のあ「渓谷を縫うように、紅く染まった川を横目に進む。途中下車して、河川敷を歩きながら古代の息遣いを感じる…何度行っても飽きないわ」

柚「いいなー…」

P「とまぁ、奈良も魅力がないわけじゃないんだ。学生時代に行くなら京都や大阪の方が勧められるだけでな」

21: 名無しさん@おーぷん 20/10/18(日)03:48:56 ID:U0S
柚「何だか…奈良に行きたくなってきたよ、Pサン」

P「そうさな…紅葉に合わせてフリスクの休暇をまとめるから、そこで行ってきたらどうだ?」

のあ「私も同行するわ」

P「のあが?」

のあ「年末は仕事で実家に帰れないもの。顔を出しておきたいの」

歌鈴「わ、私も…いいですか?両親と、お正月のお仕事の調整をしておきたくて…」

P「ん、分かった。みんなで行ってこい。存分に奈良を堪能してくれ」

柚「やったー!」

22: 名無しさん@おーぷん 20/10/18(日)03:49:18 ID:U0S
P「ついでに奈良漬け買ってきて。家の在庫切れちゃって」

柚「それが本命だね?」

P「失礼な。お使いを頼んでるだけだぞ」

のあ「奈良漬け…昔は苦手だったけれど、今となっては好物…」

P「金は出すから、のあも好きなだけ買っていいぞ」

のあ「…ありがとう」

P「別にいいさ。…さぁ、昼休みも終わりだ。柚はこれからレッスンだったろ?」

柚「あ、そうだった!ありがとうPサン!レッスンの時、みんなにも奈良の魅力を伝えてみるよ!じゃあ行ってきまーす!」ガチャッ

P「……ま、いいか。二人はこの後予定あったか?」

のあ「無いわ」

歌鈴「私も無いです」

P「んじゃ仕事の調整しとくか。まずこの案件なんだが……」


おわれ

23: 名無しさん@おーぷん 20/10/18(日)03:51:00 ID:U0S
以上です

奈良県良いところですよ。何もないけど
大人になってから行くと魅力溢れて何度も行きたくなります。食べるものとホテルはないけれど、田舎らしさを楽しむなら最適な場所ではないでしょうか
奈良県ええとこ一度はおいで

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