円安だと売る力が強くなる円高だと買う力が強くなる

はじめに

現在、日本経済は円安基調が続いており、1ドル150円というレートに達しました。マスコミは円安が日本経済に悪影響を与えるという論調を展開していますが、経済学者の髙橋洋一氏はこの見解に異を唱えています。本記事では、円高と円安のメリット・デメリットを整理し、髙橋氏の見解を基に日本経済の現実を探ります。

髙橋洋一氏の見解

髙橋氏は、円安がGDP成長率に対して正の相関を持つことを示すデータを提示しています。為替競争力とGDP成長率の相関係数が0.53であり、経済協力開発機構（OECD）のモデルでも、円安が10％進むと1～3年以内にGDPが0.4～1.2％増加することが証明されています。これらのデータは、円安が日本経済にとってプラスの影響を与える可能性が高いことを示唆しています。

円高時代を振り返る

2008年のリーマンショック後、多くの先進国は金融緩和を行いましたが、日本は民主党政権下で円高が進行する中、金融緩和政策を取らず、景気回復が遅れました。その結果、日本の経済成長率は低下し、先進国の中でも最低水準となりました。2011年10月末の時点で1ドル75円台、日経平均株価は8988円でしたが、翌年末に安倍政権が発足し、金融緩和政策により円安が進みました。

円高と円安の比較

円高と円安の経済効果は明確に異なります。円高時代には日本の経済成長が停滞し、円安時代には成長が促進されました。髙橋氏はこのメカニズムを理解すれば、「円高のほうがいい」という結論にはならないと主張しています。円高になると実質賃金が低下し、国内景気が悪化するため、「失われた20年」といわれる状況に陥る可能性があります。

賃金と雇用の関係

髙橋氏は、賃金を上げるためにはまず雇用を増やし、失業率を下げることが重要だと述べています。これにより人手不足が生じ、名目賃金が上昇し、結果として物価も上がり、実質賃金も上昇するというメカニズムが働きます。このため、円安が進行することが、最終的には国内の実質賃金の上昇につながる可能性があります。

反対意見とその反論

円安が日本経済に悪影響を与えるとの反対意見も多くあります。例えば、「円高時代の方が収入が多く、生活が楽だった」という声や、「円安インフレで実質賃金が低下して庶民生活が悪化している」という意見があります。しかし、髙橋氏は、長期的には円安がGDP成長を促進し、その結果として実質賃金の上昇につながると主張しています。

円安と貿易

円安によって日本の輸出競争力が高まり、貿易黒字が増えることが期待されます。しかし、実際には日本は最近3年連続で貿易赤字を計上しており、輸出企業の利益が国内経済全体に波及していないという問題も指摘されています。これに対して、髙橋氏は円安が長期的に見て日本経済にプラスの影響を与えると強調しています。

結論

髙橋洋一氏の見解によると、円安は日本経済にとってプラスの影響を与える可能性が高いです。歴史的なデータやOECDの経済モデルからも、円安がGDP成長を促進することが示されています。また、賃金と雇用の関係からも、円安が実質賃金の上昇につながる可能性があります。したがって、国内での円安批判は国益に反する行為であり、日本経済に対する理解が不足していると言わざるを得ません。

円高と円安の経済効果について再考し、日本経済の現状を正しく理解することが重要です。髙橋氏の見解を参考に、長期的な視点で経済政策を考えることが求められます。