ある日の午後、のび太は一つ目の時計に目を細め、悔しげな表情を浮かべる。部屋の外から響く子供たちのはしゃぎ声が、彼の頬を引き締めさせる。教科書を開くことに気力を使い果たし、絶望的な視線で緑色の毛布の下からドラえもんを呼び出す。
「ドラえもん、助けて。テストでまたゼロ点取っちゃった…」
彼の声は、その悔しさが見事に表現されている。周囲に満ちた空気がその焦燥感を増幅させる。のび太の痛々しい表情を見つめるドラえもんの眼差しは、優しさとともに少しの困惑を含んでいた。
「のび太、頭をよく使うための秘密道具を持ってるんだけど、それを使ってみるか?」
ドラえもんは四次元ポケットから「神アプデ」を取り出す。それはスマートフォンのような道具で、使用者の頭脳を一時的にアップデートする能力がある。
のび太は初めて見る道具に目を輝かせる。「これでテストも楽勝だ!」と彼は胸を張る。しかし、道具にはある特性があった。それは、アップデートが終わった後、使用者は一時的に物忘れをするというものだ。
その事実を聞いたのび太は一瞬戸惑いを見せるが、すぐに希望に満ちた眼差しに戻る。「それなら大丈夫だ、だってドラえもんがいるんだから!」彼はその道具を使うことを決める。
神アプデは頭頂部に取り付け、操作ボタンを押すと青白い光がのび太を包み込む。のび太の瞳は知識によって輝きを増していき、その場の雰囲気は次第に高まっていく。部屋の隅々まで光が行き渡り、窓の外の鳥たちが驚いて飛び立つ。
その後ののび太の行動は驚異的だ。数学の公式を次々と解き、さらには教科書に載っていない先生が教えてくれなかった問題も解いてしまう。まるで全てを理解し、全てを制御するかのように。ドラえもんは見守るうちに少し驚きの表情を浮かべるが、同時ににっこりと微笑む。しかし、その微笑みにはちょっとした不安も隠れていた。
一方で、のび太の脳が神アプデで膨大な知識を取り込むたび、彼の周りの雰囲気は少しずつ変わっていく。空気が重くなり、光が少しずつ薄暗くなる。のび太の表情は一途な集中から徐々に困惑へと変化し、そしてやがて彼は神アプデの副作用、物忘れを体験する。
部屋の中に充満していた光が急に消え、のび太は混乱する。彼は自分が何をしていたのか、どうしてそこにいるのかを思い出そうとするが、頭は真っ白な霧で覆われている。
「ドラえもん、なんだか頭がぼんやりするよ…」
彼の声は純粋な困惑と驚きに満ちていた。ドラえもんはその様子を見て、心の中で少し後悔している。
「のび太、君が頭を使うのを助けたかっただけなんだ。でも、たしかにこれはあまりにも強力すぎたかもしれないね…」
ドラえもんはのび太に謝罪し、その後彼が頭を冷やすために「タイムフローズン」を使う。その間にドラえもんは神アプデの副作用を解消するための道具を探し出す。
のび太が元に戻った後、彼はドラえもんに向かって謝罪する。「ごめんなさい、ドラえもん。僕、ちゃんと自分で勉強すべきだったよね。」しかし、ドラえもんは優しく微笑んで答える。
「大丈夫だよ、のび太。君が自分の力で頑張ろうと決めたことが一番重要だからさ。」
最後に、のび太はドラえもんと一緒に再び勉強に取り組み、道具に頼らなくなりました。