
関係者によると 徳井さんは、所属する吉本興業から支払われるテレビやラジオの出演料などを本人が個人として設立した「株式会社チューリップ」を通して受け取っていたが、2012年から2015年までの4年間で個人的な旅行や洋服代、アクセサリー代などを会社の経費として計上していた。
東京国税局はこれを経費として認めず、約2000万円の所得隠しを指摘した。 また、2016年から2018年までの3年間は収入を全く申告しておらず、徳井さんに対し約1億円の申告漏れを指摘した。重加算税等を含めた追徴税額はあわせて約3400万円にのぼるとみられる。 徳井さんはすでに納税と修正申告を済ませている。
所属事務所の吉本興業は事実関係を確認している。
関係者は今回のケースについて「納税意識が欠如していると言わざるを得ない」と厳しい見方を示している。
現在の所得税の税率は最大45%、一方、法人税の税率は約半分の23.2%であることからタレントやスポーツ選手らは個人事業主として受け取った出演料などを確定申告するより、自分の会社の収入にして会社から給与として
受け取った方が税制上のメリットがあるといわれている。
このこと自体は問題ではないが、今回のケースでは会社から法人税の申告はされておらず、一部を個人の旅行代金などに経費として計上していたことや、指摘された1億2000万円の所得隠しと無申告は実に7年間に渡っていて、国民の義務を果たさず、納税を軽視した事案といえる。
まだまだ序の口??
今回のケースを見ると調査期間が7年分で長く、3年や5年ではなかったことと、重加算税を課されていることで悪質だと認定されています。ほとんど故意に所得隠しをしていたという厳しい見方があったはずで、そこまでいくには情報提供で徳井さんの言動や金の動きに怪しい点があったと見る方が自然ではあります」
徳井のような有名タレントが、通算9年間も税金を払わずにいたことは脱税行為としてみると「ずさんすぎて、そこは不可解」(前出国税庁職員)だ。たしかに徳井は今回以前にも10~12年、13~15年の各3年間も期限内に申告せず3年分をまとめて申告していた。税務署から再三の督促にも応じず、法人設立時に社会保険の加入手続きもしていなかったことは、本人が釈明した「どうしようもなくルーズだった」のだろうが、一方でこれが「国税局による、もっと巧妙にやっているタレントへの警告にもなっている」と職員。
「国税庁は毎年、取り締まりの重点項目を決めているんですが、徳井さんの無申告事案は17年、18年度にターゲットとなっていたものなんです。だからタイミング的にはまさにズバリというものですが、同じく国税庁が力を入れている案件があって、これに当てはまる芸能人がたくさんいます。徳井さんより巧妙に脱税行為をしている連中はこれから危ないと思いますね」
その国税庁の取組強化方針で挙がっているのが「国際事案」だという。
「海外への送金を利用して報酬をごまかす事例が増えているからです。たとえば機械メーカーや宝石店などが、国内での売り上げを、国外に販売した免税取引に偽装して消費税の還付を受けていたりするんです。海外向けだと消費税が免除され、あとで申告して還付してもらえる制度を悪用した事例です」
この話だと芸能人とは無縁のように思えるが、実際にマークされているタレントが多数いるのだという。
「芸能人のやり方はまた違っていて、あるタレントは、アジアで活動した部分の肖像権などの収入を日頃から作っておいて、国外の知人名義の預金口座に送金させる形にしています。そこに国内での報酬も送金させていたり、海外の不動産を購入してマネーロンダリングみたいなことをやっていたりするケースがあって、できあがった不正資金を日本の投資信託の運用資金に戻しているという例も分かっています。これまで海外絡みだと調査が及びにくかったので摘発にまで至らなかったんですが、一部の芸能人の間では横行してきたので、調査に乗り出す動きがあるんです」
つまりは徳井なんかよりもずっと巧妙に脱税をしているタレントがいるのに野放しになっているわけで、ある意味、徳井が彼らへの警告になったというのである。
問題視されるタレントのひとりは今回、徳井の件についてテレビ番組で厳しく叱咤するようなコメントをしていたお笑い芸人でもあるという。
「表向き常識人を演じていながら、内心はもっとうまくやる方法があるって思っていたはずですよ。でも、これからもその手口が続けられるとは思わない方がいいです。昨年から海外口座の情報を世界中で共有できる制度が始まって、海外にある日本人の口座情報が無数に入ってきていますから、国際事案の取り組みでしっかり摘発に動けます。ただ、きっかけになりやすいのは徳井さんと同じ情報リークによる発覚でしょう」
